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和田塾通信2014/05

2014年5月 和田塾通信〔№47〕

今月気に入った言葉、気になった言葉

『自分の城は自分で守れ』

2014年4月の日本経済新聞のコラム「私の履歴書」の執筆者はトヨタ自動車名誉会長の豊田章一郎さんである。その15号で触れているが、1950年前後、トヨタ自工(当時)が経営危機に陥った、その時に社長に就任したのが石田退三氏。トヨタを救った経営者として語りつがれている。その石田さんの名文句がこれである。まさに経営とは、社長にとって厳しいもの、どんなことがあっても自分で守られなければならない戒めの言葉である。

「伊賀の里モクモク手づくりファーム」から学ぶこと

さる4月17日~18日に、和田塾有志のメンバー約20名と三重県にある「伊賀の里モクモク手づくりファーム」を中心にした視察セミナーを行った。「モクモク手づくりファーム」の次に行ったのが「伊賀流忍者博物館」、そして、滋賀県大津市比叡平にある富士山と桜の絵で有名な「浜田泰介画伯邸」をお訪ねし、その後、先生ご夫妻のご案内による「国宝東寺」を視察するという2日間であった。
テーマは三つ。一つは「時流把握」、二つめは「本物を視る」、三つめは「歴史に学ぶ」、これが私自身が設定した本題である。
モクモク手づくりファームについて詳しくは後述するが、まずは「伊賀流忍者博物館」に触れたい。日本人であれば、ほとんどの人が忍者の存在は知っている。それくらい歴史上では欠かせない存在感があった。
特に奈良に近い伊賀や甲賀の忍者は有名である。歴史的には、聖徳太子の時代の飛鳥時代から存在しているという話しもあるが、定かではない。
忍術を使う人を忍者というが、忍術は格闘技ではなく、伊賀、甲賀地方で、発達した独自の兵法である。修験道との関わりなどから、山伏の戦法からも学んだのが源流であるという。
江戸時代に、この伊賀地方で始まった、藤堂藩で「忍び」と呼ばれた人々の子孫は「伊賀者」として参勤交代の際の藩主の護衛役や国内の情報収集にあたったため、帯刀を許され、各村の自治を任されたりした。
忍者屋敷に代表されるように、当時の藩主の家などは忍者の知恵の結晶である「カラクリ」などが施されており、地位の高い、旧家などでもそのノウハウを取り入れたという。
今回訪ねた市の運営する伊賀流忍者博物館は「地域の観光資源」であることがわかる。忍者ショーにはアジア諸国からの観光ツアー客が数十人も訪れていた。
今、外国人観光客が増加しているが、京都や奈良とセットされた観光コースとして、ちょっと辺鄙な伊賀まで足を伸ばし、日本の歴史にふれる外国人が増加しているのも時代の変化を感じるし、このような観光資源が地方にあることをもっと訴えていくことも、観光立国を成長戦略としている日本にとって大事なことだと改めて感じる。
さて、モクモク手づくりファームであるが、現在、日本の農業の実態は、大転換期に来ている。これは農業だけの問題ではない。日本は明治時代以降、西洋からあらゆることを学び、産業報国して、近代国家を創り、戦後の復興から高度経済成長を成し、経済国家を創ってきたが、今や日本は成長国家、成熟国家から老齢国家と言ってもよいような状況に入っている。
「少子高齢化社会」という国の状況が最もそれを表している。つまり、この100年、50年で日本という国を創ってきた農業や産業などが「今までのカタチ」では通用しなくなってきているということである。
農業は食料問題でもある。今や日本は、自給率40%を切っており、外国から食物を輸入しないと日本人の食生活は成り立たない。これも特に戦後の農業政策の失敗であったと思う。
日本は戦後、あまりにも多様な国の食べ物を入れた。そのことが結果として、食べ物がいわゆる「西洋化」し、米を食べなくなった。そして肉中心の食事が多くなった。朝から飲むコーヒーや紅茶にしても「日本産」ではない。さらに朝から多くの人が小麦粉から作られるトーストや菓子パンを食べている。
もっと分かり易く言うならば隆盛中のコンビニで売られている商品の原材料のほとんどが輸入品であり、加工されて製品化されたものである。これでは、日本の農業は限られた生産物しか作れないし、小麦や大豆などの原材料も、現在の日本の消費を賄う生産量は出来ない。居酒屋やレストランチェーンなどのメニューに使われる材料にしても同様である。
農業者にしても朝早くから夜遅くまで働く農業の仕事のあり方をみてきた日本の二代目、三代目の後継者は継ぐ意思を持てなかった。したがって戦後60年以上、ずっと農業従事者は減少し続けて「さぁ大変だ!」となっているが、これを軌道修正するのは一朝一夕にできることではないというのが現状であろう。
モクモク手づくりファームの創業者、木村修さんは、もともとは、三重県経済連の職員であった。同僚の吉田修さんと脱サラして伊賀地方の養豚家18人と農事組合法人「伊賀銘柄豚振興組合」を設立、小さなログハウスで「手づくりハム工房モクモク」を1987年に始めた。これが今のファームの前進である。
経済連時代の83年、流通担当として豚を扱っていた木村さんと、獣医として養豚などを指導していた吉田さんが、養豚家3人と「伊賀山麓(さんろく)豚」を開発。そして抗生物質の量を抑え、木酢酸を与えて臭みをなくした、この豚肉の付加価値をさらに高めようと加工業に乗り出したのである。
リーダーである木村さんや、このモクモク手づくりファーム自体がそうであるが、まさしく「起業家精神」と「世の中に対する反骨精神」から、このファームがスタートしていることに注目しなければならない。
経済連の時、ブランド力のない豚を流通業者に売りにいっても「なんぼ安くなるんだ?」と価格のことしか言われない。しかし一方では、三重県には「松阪牛」という牛肉では日本の最高級ブランド肉があり、ここでは価格のことは一切言われない。こういうことは経済連にいては解決できないと飛び出すわけである。
木村さんと吉田さんは、こういう志をもった行動ができる、並のスタッフではなかったということである。しかし、「金はない、信用はない、ノウハウはない」等々、創業期はどんな会社でも経験するような「無い無いづくし」であった。
それは即、倒産という危機につながる。木村さんは「こういう危機が今まで3度あった」と笑いながら言う。
モクモク手づくりファームの成長への兆しの第一歩は、近隣の幼稚園などの生徒を対象にした「手づくりウィンナー教室」が当たったことである。そして、先生方やお母さん方がここに来てハムやソーセージを買ってくれて、さらに「美味しかったので」と、友人やお世話になった人などに贈ってくれるようになった。
「これに助けられた」と木村さんは言う。そして今、このモクモク手づくりファームは「体験型施設」や近隣でとれた農作物を料理する「ブッフェスタイルのレストラン」や「ハム・ソーセージ、パンなどの専販店」、そして「通信販売」などを行っている。
苦労した創業原点の頃のやり方が花開いてきたということだ。そして計100ヘクタールにも及ぶ自前の田畑や果樹園、牧場と、近隣の養豚家や百軒の契約農家が作る安心な材料だけを使う。週末には、親子連れが農場や工房でものづくりを体験し、新鮮な野菜や料理に舌鼓を打つ。
今や年間50万人が来場するようになった。関西や中京からは自動車で1時間半から2時間はかかる立地であるにもかかわらずである。
木村さんには、経済連時代から「小売業や製造業は成長しているのに、農作物を作る農業が衰退している」という矛盾と危機感が常にあった。これが原点である。
だから「自分たちは流通の下請け業になってはならない」という反骨精神がある。そのために「自分たちが作ったものを自分たちの手で加工、販売する」という「自己完結型の脱・下請け農業」という考え方を持っている。そのために「価格ではなく価値で勝負する」、そのために「ブランド力をつける」ということに腐心してきた。
今、モクモク手づくりファームには全国から、モクモク手づくりファームの理念に共感した若者が「働きたい」とやってくる。また「転職組」も多いという。
モクモク手づくりファームは、生産する1次産業、加工する2次産業、販売やレストランなどの3次産業、つまり(1次+2次+3次の)「6次産業モデル」として全国の注目を浴びているが、私は「4次産業化」つまり、ノウハウの普及事業が多くなっていることに注目している。
事実、既に全国の農業関連施設の相談にのり、農業公園作りを手伝っている。「農業特区」に指定され、田園型政令都市をめざす新潟県では、木村さんがアドバイザーとなって、その手伝いをしている。
今、地方が木村さんたちに「地域を元気にする、農業を元気にする指導をしてほしい」という要請をすることが多くなっている。それは、行き詰っている農業、地方の活性化に対する解決の糸口を見つけたいという想いでもある。
モクモク手づくりファームのビジネスモデルであるが、特に大事なのは「それを実践していく考え方(理念)に共感するから」に他ならない。それは次の「モクモク流農村産業」の定義づけからも伺い知ることができる。

<モクモク手づくりファームからの学びの要点>
1.起業家精神、反骨精神は経営の土台である
2.「志」こそ、つまり「何のために」(出来れば世のため、人のため)にするかを明確に持ち続けなければならない
3.「マーケティング発想」と「イノベーション」こそ成長への基本である
4.ビジネスは「主導権」が大事である
5.お客さんの組織化、固定化、会員化(モクモクネイチャークラブは全国4万世帯以上が会員)が事業を安定化する
6.やはり、リーダーの存在感、そして理念(価値観)の共有化が大事。「共感」に勝るモチベーションはない

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