和田の本棚(2020. 11 №37)

 

和田の本棚

和田の書棚から「気になった一冊」をとりあげて紹介いたします。

著者:梅谷薫

発行所:講談社

2008年11月26日第1刷発行

定価:1400円(税別)

<本紹介>

医者が治せない原因不明の病気が増えている 。安倍元首相の「機能性胃腸障害」は病気ではない。機能的には異常のない病の増加に医者も悩んでいる。トップクラスの内視鏡専門医で、心療内科医でもある著者が10万人を超える患者を診察するうち、健康の問題に「言葉」が深く影響していることに注目。心療内科で「言葉」と「心身の健康」の関連性を重視する臨床に尽力する中、臓器・心の両面から患者に向き合い、たどり着いた結論は…。

<気になった言葉>

〇「生きていてもよい」という確信を得られない子どもたちは、大人になっても生きていることに強い不安を抱えています。すると、大きな悩みや課題にぶつかったとき、恐れや不安に押しつぶれそうになってしまいます…だからパニック発作やうつの症状なども出やすくなるのです…批判されずにそのまま受け止めてもらえれば、それだけで症状が軽くなる人がずいぶん多いのです

〇19世紀の哲学者・ヘーゲルは「幸福な人とは、自分の境遇が自分固有の生活や意思や恣意にうまく合致し、その境遇に満足している人のこと」(『歴史哲学講義』)だと言いました。20世紀の数学者であり思想家でもある、バートランド・ラッセルは「幸福な人とは、客観的な生き方をし、自由な愛情と広い興味を持っている人である」(『ラッセル幸福論』)と言っています(168P3L~)

〇私たちの身体も心も、常に不安に揺さぶられ、揺れ動いている。その不安な気持ちを込めて「ありがとう」と言ってみる。感謝するということは、他者の存在を無条件で認めること。それが、心の「作用・反作用の法則」で自分に対しても「無条件の承認」をどこかで与えてくれる(174P2L~)

◎言葉は自分自身を定義し「生きる構え」を決めている(175P4L~)

※…は中途略を表わします

 

[感想]

自分の中でバラバラに散らばっていたものが、一つにまとまり、この本を読んで氷解するというか、まさしく「腑におちてくる」本。そもそも病気の定義とは…とか考えさせられるというのもあるけれど、ああ、そうだなあ、そうだったなあと肯くことだらけ。「気の持ちよう」と言われると「その気が…」とより気持ちがへたるけれど、言葉を見直し、使い方を変えてみることはできる。特に身近な家族、同僚からが大事だなと思う。「あんなこと言われた!」という思いに苛まれた自分がいたのに家族や会社という中での逃れられない関係に「迂闊に言葉を発していなかったかな」と振り返るとすごく心許ない。

最後に著者が恩師である精神科医・中井久夫先生の言葉を紹介している。「医者は希望を処方できるようになれば一人前」、これは母でも父でも妻でも夫でも、また教師でも、その場所場所でのリーダーでもあらゆる立場の人に当てはまると思う。ちなみに弊社社長の和田はいつも「希望と和顔愛語の塊」です!

[和田のコメント]

この本の価値は、いわゆるエリート医師、内科医、心療内科、大腸ガンの内視鏡施術件数でも日本の三本指に入る梅谷香さんが医師として辿り着いた「医は仁術」ということにあると思っています。
日本では古来から「言霊(ことだま)」と言うように「言葉には不思議な力がある」と信じられ、言われてきました。「良い言葉」を発すれば、人に良い影響(勇気、希望、ヤル気、元気等)を与えることができるし「悪い言葉」を発すれば人を駄目にしてしまうということです。
私自身も船井幸雄さんからの叱咤激励の言葉によって今日の自分があると思っています。
ある女性の患者の話があります。非常に不幸な境遇で育ち、結婚もし、子どももできたけれども、ひどいウツ病に長年悩まされます。梅谷先生はこの患者さんと正面から向き合い「希望と勇気」をもってもらうために様々な処方をしました。やがて彼女は夫と離婚、子どもを引き取って働きながら育てました。生活も落ち着いてきた頃、この女性が先生に言った言葉は「私は健康になりたかったわけじゃないんですね。私は、本当は〝幸せ〟になりたかったんです」、そしてもう一つ「先生が私に寄り添い、伝えたかったことは『自分自身を愛しなさい』ということだったんですね」
梅谷先生、「自分がやってきたことは間違っていなかった。そして患者さんから逆に救われた、教えられた」とおっしゃっています。