今月の学び(2021.12 №49)

後継リーダーに必要な役割と仕事④-一番大事なことは「決断する」こと、二代目、三代目は「決断すること」を身につけること

決断ほど「組織の長」にとって大事なことはない。9月にも書いた。

その決断によって会社であればヘタをすれば赤字になったり倒産に追い込まれることすらある。スポーツであれば勝ち負けに直結する。

みずほ銀行でシステムトラブルが何回もあった。ATMが動かない、外国に送金も出来ない、原因の詳細は分からないが、人員削減や運用管理体制の脆弱化、経営陣の認識の甘さなどと言われている。

グローバル化の時代、メガバンクの度重なるシステム障害による業務停止は国内のみならず海外企業にも影響を及ぼし日本の信用失墜にもつながる。金融庁はそこを重く受け止めているようだ。

結局、そうした幾度ものトラブル発生には会社トップの認識、判断の甘さがあり、さらに、どう対処するかの決断が甘かったとしか言いようがない。

大企業の悪いクセであるが、社長が辞めることによって責任を取るというサラリーマン社会の典型で処理をする。しかし大企業の社長や頭取は辞めてもそれなりの保障がされていて、つつがなくサラリーマン人生を送る。

大企業になればなるほどトップクラスの決断・判断は難しいものがある。

かつてソフトバンクホークスの王会長からこんな話を聞いた。「巨人で現役を引退し、指導者となるための育成期間として藤田元司監督のもと、ヘッドコーチに牧野茂さん、私が助監督という、いわゆる〝トロイカ体制〟で3年間務めた。藤田監督は私の次期監督としての修業期間と考えていたようだが、この体制で過ごした3年間は全く勉強にはならなかった」とおっしゃっていた。その後、日経新聞の「私の履歴書」にも同じ様なことを書かれている。

王会長が言いたかったのは「自分で勝負のための判断や決断をしないと責任もとれない」ということなのだと思う。決断することによって、さらに真剣に選手の育成、勝負へのこだわりに関して学ぶことができるものだ。

様々な会社に関わってきて同じ様なことを社長の息子を部長から役員へ、そして社長へというプロセスでも見てきた。

息子が社長となり、前社長は会長へと肩書は変わる。しかし、ここが難しいところであるが、肩書は変わっても「役割と権限」が変わらないと何も変わらないということが多い。部長や役員の時からそれなりの意思決定決断を小さなことでもしてこないと、不思議なことにその行為ができないのである。

ましてや力の強い会長(親)がいると社長は中途半端な立場になってしまうことが多い。部下たちも会長が社長だった時の部下だったりするから会長の顔をうかがいがちである。それが3年、4年と続いていくと、息子の社長としての存在感は益々薄くなってしまうことになる。

私はそのような場合のアドバイスとして「会長は会社の未来のための仕事や地域、業界の仕事を中心にしてください。社長は一年、短期の決算と三年くらい先のビジョンをつくり、示し、それに邁進してください」と話している。

社長の仕事は決断の連続である。決断をすればもちろん失敗もある。それも勉強である。その連続性の中に成長があるということもたくさんみてきている。

「自分で決める!!」ということがトップの仕事であり、責任でもあることを再認識していただきたい。